巷の情報を集めて行くと【香港】に関する話というのはまさに二極化していると言っても過言ではありません。
中国側(或いは中国寄り)の情報というのは、今や香港の"宗主国"である中国の主権の正当性と、外国勢力が撒き散らす(?)プロパガンダの影響で(香港に対する)中国の指導というのが著しく"歪められた"形で伝達されているという位置に強い懸念を抱いているというものです。
一方で、我国日本を含めた西側諸国が得る情報というのは、既に何度も当Blogでも触れているように、中国が香港の自治権をこの「香港国家安全維持法」で無効化し、結果的に"強奪した"、と言うテーゼが骨子として横たわっています。従って、今でも我々はこの系統の解釈や論説がひとつのフィルターとなって香港の行く末を占っていると言うのが現状であると言っても良いでしょう。
事実、その未来に懸念を抱く西側の多国籍企業の一部は香港から撤退(或いは撤退の準備)に着手しつつあり、こうした影響ゆえ先行きがかなり"不透明"となっているようにすら見受けられます。
政治的混乱、中国本土の独裁体制による弾圧、新型コロナウィルスのパンデミック。
負の要素の羅列しかないような香港ですが、果たしてそれは真実なのでしょうか?
実際のところ、当地の経済指標データでその生産性を見て見ると決して下り坂を描いている訳ではなく 、むしろ、この香港を牛耳る富裕層などは、この(昨年から現在に至る)政治的な軋轢期でも"泰然自若"としていたのが印象的です。
勿論、西側の動きについてはひとつの"曲がり角"に到達したのは間違い無いでしょう。
例えば在港の米国内商工会議所が行ったアンケートで回答者のうち4割強が"香港を去る"と言う選択肢を検討していると回答した程ですし、これを裏付けるかのようにFacebookやGoogle等のハイテク企業は、データ用の海底ケーブルで香港と米国をつなぐ計画を既に撤回していたりします。また米国だけでなくフランスのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンや化粧品最大手のロレアルなども、香港の地域本部の一部スタッフの移動を開始したり、更には我国日本のソニーインタラクティブエンターテインメント社なども幹部をシンガポールに配置換え等々...まさに「逃亡犯条例」から発生したデモ(2019年)以来、「国家安全維持法」で更に拍車が掛ったこの香港から別の場所に地域本部や事務所を移転させたと言う西側大手企業の流出トレンドは止まらないようにすら見えます。
一説には香港の商業用不動産の空室率が過去15年間で最悪の水準に達してしまったのは"この余波である"と語る業界関係者も居る程ですので、これらが与える香港経済への負の影響は甚大なのかも知れないと想像が出来ます。
では、二極化のもう一方である"中国寄りの見解"と言うのはどう言う事実に裏付けされて居るのでしょうか?先ず挙げられる事実は、英国が打ち出したBNOパスポート(英国海外市民旅券)が当初の想定値を大きく下回る数(実際に申し出をした香港人の数というのは僅か4万人弱に止まっている状況)になってしまったという事と、(社会構造上の一番上に位置する)富裕層がこの英国の提案に"動かなかった"言う事です。勿論、移民したところで彼等が拘った「自由」は謳歌出来たとしても、現実的な話としては、富裕層は中国でビジネスを行うことで得た利権をドブに捨てるわけにも行きません。
また、西側企業がファンディングとして利用した機能が、今は中国系企業のファンディング市場と入れ替わる途上であるとの見方も出来なくはなく、数年後には(現在見えない図式というものが)我々の前に姿を表すやも知れません。
更に、中国は香港を「中国型香港」として建て直しを行っている最中であるとの声も昨今では聞かれるようになって来た話もあるので、これは、ひょっとしたら習近平の悲願である「一帯一路」や「デジタル人民元拠点」で重要な役割を果たす位置付けにより香港は再生を果たす可能性もあります。
そうした様々な見地から改めて状況を見て行くと、今の香港というのは依然として宗主国(中国)と旧宗主国側(英国&米国)の"利権争い"の渦中にあるということが言えそうです。二極化の決着がどうなるかはさて置き、そうした見地でこのアジア情勢を見て行くことも、今後はもっと必要になるスタンスと定義しても良さそうです。